SEASON FINALE

オービット・ハウスは家になる。

宇宙銀行、エアロック横ATM、軌道上の告白、ひとりぼっちの会議、 酸素残高、月面権利書、右手袋のササキさん、地球窓の夜。 その全部が、いつの間にか一つの生活になっていた。

オービット・ハウスは家になるの表紙アート
オービット・ハウスの乗員たちと宇宙ステーション
MISSION LOG

最終日ではない。
でも、区切りの日だった。

オービット・ハウスの朝は、いつも通り始まった。 酸素正常。電力正常。軌道正常。通信正常。

それから、ダイチが端末を見て言った。

「生活改善台帳、今日で第10版です」

レイは少し笑い、ミノルは枕司令官を見た。 黒川管制官は、地球側で静かにコーヒーを置いた。

最初、この場所は任務だった。

そこには番号があり、手順があり、報告義務があり、 失敗してはいけない作業があった。 人間は乗員であり、時間はスケジュールであり、 食事は補給品であり、会話は通信ログだった。

でも、いつからか少し変わった。

フリーズドライ苺が消えた。 ラズベリーパイが台帳になった。 台帳が宇宙銀行と呼ばれた。 収納箱がATMになりかけた。 レイが本当の自分を話した。 ミノルがレンチ隊長と枕司令官を紹介した。 酸素は笑いの外に置かれた。 月面権利書は「いつか行きたい場所」になった。 ササキさんは未承認のまま、みんなを守った。

「任務だった場所に、思い出が増えました」

ダイチがそう言うと、レイは窓の外を見た。

「思い出が増えると、片づけが難しくなります」

ミノルはうなずいた。

「枕司令官も、片づけは苦手です」

地球側の黒川管制官は、少し間を置いて言った。

「そこは改善してください」

三人は笑った。 その笑い方が、最初のころとは少し違っていた。

MANGA SEQUENCE

家は、
宣言してできるものではない。

オービット・ハウスの断面図風漫画イラスト
PANEL 01

最初は施設。

研究区画、居住区画、観測窓、エアロック。 すべてに名前があり、用途があった。

「ここは任務場所です」

オービット・ハウスの主要キャストが地球窓に集まる場面
PANEL 02

次に、
名前が増えた。

地球窓。生活改善台帳。レンチ隊長。枕司令官。 ササキさん。いつか行きたい場所。

「名前が増えると、場所は少し家に近づく」

地球窓で少し寂しく、少し笑う宇宙飛行士たち

THREADS RETURN

すべての騒ぎは、
少しずつ役に立っていた。

SPACE BANK

宇宙銀行

銀行ではなかった。けれど、貸し借りと感謝を忘れないための 生活改善台帳として残った。

「便利な冗談は、名前を変えて残ります」

REI

軌道上の告白

レイの言葉は、ステーションの空気を変えた。 誰かが自分でいられる場所は、少しだけ家に近い。

「ここでは、その名前で呼びます」

MINORU

ひとりぼっちの会議

架空の友人たちは、孤独の冗談だった。 でもその冗談が、本当に一人を守った。

「会議は終わっても、友だちは残ります」

HOUSE RULES

オービット・ハウス
生活規則・最新版

酸素 残高化しない
返す
ATMと呼ばない
所有しない。目指す
ササキさん 未承認だが尊重する
地球窓 会議にしない夜を作る
浮かぶ物たちと会議する佐伯ミノル

地球側も、
少し慣れた。

黒川管制官は、最初のころより驚かなくなっていた。 宇宙銀行、ATM、枕司令官、ササキさん。 どれも報告書には書きにくいが、意味はある。

意味があるなら、完全に消す必要はない。 安全な言葉に直し、危ない線を引き、 それでも残るものを見守ればいい。

「こちら地球。オービット・ハウスの生活改善を確認しました」

「ただし、銀行ではありません」

管制官・黒川のキャラクターアート

SCRIPT SAMPLE

最終話、
名場面。

SCENE

居住区画・朝

ダイチが壁に新しい紙を貼っている。 レイが少し離れて見ている。 ミノルは枕司令官を抱え、ササキさんは壁で静かに固定されている。

ダイチ:「生活改善台帳、第10版です」

レイ:「今度は、危ない項目は入っていませんね?」

ダイチ:「ササキさん確認済みです」

ミノル:「ササキさん、未承認なしです」

黒川:「こちら地球。それは珍しいですね」

ミノル:「枕司令官は、これは家のルールだと言っています」

レイ:「それなら、少しわかります」

家!

CHARACTER CLOSINGS

それぞれが、
少し変わった。

DAICHI

記録する人

ダイチは、何でも台帳に入れようとする癖を少しだけ手放した。 でも、感謝を忘れない仕組みは残した。

「全部ではなく、大事なものだけ」

REI

自分の名前でいる人

レイは、もう地球窓でしか本音を言えない人ではなくなった。 ステーションの中でも、彼女は彼女として呼ばれる。

「ここでは、私でいられます」

MINORU

一人ではない人

ミノルはまだ枕司令官と話す。 でも、もうそれを隠さない。 みんなも、少しだけ慣れた。

「会議は、必要なときだけです」

オービット・ハウスの乗員集合ポスター
HEART

家とは、
完璧な場所ではない。

家は、間違えない場所ではない。 変なことを言わない場所でもない。 片づいた場所でも、ずっと平和な場所でもない。

家は、間違えたあとに直せる場所。 言いすぎたあとに笑える場所。 一人が不安になったとき、誰かが気づく場所。

「宇宙でも、そういう場所は作れるんですね」

最後の報告

その日の終わり、黒川管制官はいつものように確認した。

「オービット・ハウス、状態を報告してください」

ダイチが答えた。

「酸素正常。電力正常。軌道正常」

レイが続けた。

「乗員状態、安定」

ミノルが少し考えたあと、言った。

「枕司令官、休息を推奨」

黒川は、いつもなら訂正したかもしれない。 でも、その夜は訂正しなかった。

「了解。休息を推奨します」

通信の向こうで、地球側も少し笑った。

ダイチは端末を閉じた。 レイは窓の外を見た。 ミノルは枕司令官を抱えた。 ササキさんは壁で静かに未承認を控えていた。

オービット・ハウスは、まだ宇宙ステーションだった。 研究施設であり、任務場所であり、危険な外側を持つ小さな箱だった。

でも、少しだけ家になっていた。

FINAL NOTE

オービット・ハウスについて

オービット・ハウスは、地球低軌道を回る研究施設である。 同時に、生活改善台帳、地球窓、いつか行きたい場所、 レンチ隊長、枕司令官、ササキさんを持つ場所でもある。 そのため、乗員の非公式認識として、家に近い場所とみなす。

「正式ではない。でも、大切です」

SEASON ONE COMPLETE

第1シーズン、
軌道上のへんな毎日。

Mission Log: 任務は続く。生活も続く。宇宙銀行は銀行ではない。でも、みんな少し笑っている。